「伝統を絶やさない」
父子のタッグで新感覚な糀が誕生

島津麹店

父・佐藤憲光さん(左)と長男の光弘さんの二人三脚で『島津麹店』を見事によみがえらせた。誇りをもって息子に「六代目」と呼びかける父のまなざしは愛にあふれている

創業100年を迎えようというまさにその時、東日本大震災に遭った糀店。いちからすべてを再建し、よりパワーアップした新商品を人々に届ける。

スーパー食材・米糀 111年続く達人の店

このところ、糀が人気だ。酵素が豊富に含まれており、食物のもつ栄養を分解して効率よく身体に吸収させる力を持つ。また、料理に使えば肉を柔らかくするとか、食材のうまみを引き出すといい、糀を用いたさまざまな商品も販売されている。健康食品としてブームが巻き起こっているのだが、糀は日本にかなり古くからある食品で日常の食にかかせないものである。なにも新しいものではない。なにしろ日本は発酵食品大国。味噌や醤油、酒など日本を代表する食品の多くに糀が使われているのである。
創業100年以上の歴史ある老舗『島津麹店』は、石巻市では最後の糀製造所だ。江戸時代からコメを全国に出荷するための集積地であり、米どころでもあったこの土地では糀を作るのがさかん。糀は米農家でよく使われていたが、中でも島津家は昔から糀造りの達人として知られていたため、明治42年には糀店に転身。以来子孫がその技術を継いできた。現在の当主は六代目。先代から若い世代へと脈々と受け継がれて今に至る――のかと思いきや、コトはそんなに単純ではなかった。

糀は生き物。育てる人によって味も質も変わる。米を知りぬく米農家で作られたが、「どれも同じ」ではない

土地の文化を大切にする店

店舗の裏手に製造所を構える島津麹店は、今も創業当時と同じ場所にある。石巻の産んだ偉大な漫画家・石ノ森章太郎の博物館『石ノ森萬画館』がある旧北上川にほど近い。近年では観光客向けの店も散見されるエリアだが、島津麹店は地域文化に根差した地元に愛される店である。造る糀の質の良さもさることながら、宮城県産の銘柄米『ササニシキ』が1963年にできてからはずっと原材料にササニシキ1等米を使い続けているという。その郷土に向き合う姿勢もまた、糀店が次々と暖簾を下ろす中で生き残ってきた理由のひとつに違いない。愛され続けて100年を迎えたその直後、東日本大震災が起こった。
 川をさかのぼった津波は製造所を直撃。先祖代々使い続けてきた道具も機械もすべて水をかぶり、使い物にならなくなった。まさに廃業の危機。建物は残ったものの、途方に暮れた当時の五代目店主は心を病み、もはや糀を造れなくなってしまったという。100年の歴史に幕を下ろさなくてはならないのか、その瀬戸際で立ち上がったのが佐藤憲光・光弘さん親子だ。

店舗の裏に製造所がある。昔は道路に面する間口の広さに応じて課税されたため、細長いつくりになっているのだそう。

避難所生活での気づき

父・憲光さんは島津麹店の娘婿。行政書士として働いていたが、女川町で被災し7カ月にも及ぶ避難所生活を余儀なくされた。差し入れられる食事はレトルトや揚げ物などが多く、辟易。自然食の大切さを痛感し、糀店をつぶしてはならないと強く思うようになった。結婚して30年以上、休みの日には糀店を手伝ってきたのでキャリアはある。だが、自身は島津家の血を引いていない。「六代目」を名乗れなかった。
 そんな父を手伝い、さらにはトレンドを探りマーケティングまで担当してくれたのが長男の光弘さんだ。彼は島津家の血を引く孫。六代目を名乗るのにふさわしい――。本格的に二人三脚で糀造りが始まった。

硬い糀を取り除く。目で見て、感じての手作業だ。ここは父・憲光さんの経験がものをいう

研究の末に

「伝統を引き継がなくては」と強く思うものの、機材や文献を失ったため、作り方は憲光さんの記憶がたよりだ。光弘さんは出身大学の先生に教えを乞い、そこに科学的な裏付けを得る。米を蒸す時間や温度など、島津麹店が111年前から続けていた方法は、現代科学と照らしても驚くほど理にかなっていたという。そうして2014年、父子は新商品をひっさげ、とうとう島津麹店リニューアルオープンにこぎつけたのである。

若き六代目・光弘さんのマーケティングと研究心が新商品を産みだす動力。まさに父子の二人三脚

おしゃれで楽しい糀ライフを提案

島津麹店の新しい“顔”は生きたままの糀をいただける『華糀』。麹菌を殺さないよう、じっくりと低温加熱した生の甘酒だ。原料はもちろん宮城のササニシキ1等米100%。地元密着の契約農家から仕入れている。宮城らしい「ずんだ」や、デトックス効果が期待できるという「竹炭」など5種類の味展開。着色料や砂糖などの添加物は一切入れず、さらりとした後味が特徴だ。

『華糀』は5つの味展開。左から「竹炭」「紅華糀」「プレーン」「ずんだ」「発芽玄米」。竹炭でデトックスしてからプレーン、そしてよりパワーの強い玄米、と移行しつついただくとより効果的だそう

生きた糀を日常生活に

生の糀は酵素による分解力が強く、より糀のパワーを実感することができる。そのままでもいいが、果物やヨーグルトにかけたり、辛い食べ物を食べやすくするなどさまざまな利用方法を提案。『華糀』を用いたスイーツレシピをウェブで公開し、「糀」をもっと手軽に、身近に感じてもらうために尽力する。伝統を引き継ぎながらも現代にマッチした糀店。父子二人、どちらが欠けてもなしえなかった再建と新展開だ。新しい糀ライフを楽しみたい。

生きた糀で食品づくりが気軽に体験できる『自分で育てる味噌キット』。材料の大豆も宮城県の在来種『ミヤギシロメ』と、土地へのこだわりがここにも

企業情報COMPANY

企業名 島津麹店
住所 宮城県石巻市旭町3-24
TEL 0225-22-1708
URL https://www.simazu-kouji.com/
商品ページ https://umaimon.smrj.go.jp/product/detail/hM060.html
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