これが仙台の“日常”の味 ソウルフード牛たん

株式会社ひがしやま

仙台名物牛たんの誕生は昭和23年。当初のコンセプトを守り続ける牛たん専門店「炭焼き牛たん東山」に聞いた、驚きの牛たん秘話!

元祖の作った牛たんが仙台牛たんの定義に

牛たん。と聞けば、おそらく誰もが即座に仙台を思い出すだろう。世界にも牛たんを調理する文化はある。だが日本では牛たんを用いて料理をするのは仙台だけだ。なにしろ世界で流通する牛たんのうち、8割が日本に輸出され、そのうち9割が仙台に送られるというのだ。仙台人はいったいどれだけ牛たんを食べているのか?と、思わずいぶかってしまう。まぁ、東京の焼肉屋などで供される「タン塩」の切り方と比べると仙台の牛たんはその何倍も分厚い。1人前の量がそもそも違うのではないか。

牛たんは真ん中の300グラムほどを3日間熟成させて焼く。たん先はテールスープの具にするそう

「炭焼き牛たん東山」の外販事業部 主任・佐々木昌彦氏によると、仙台の牛たんには定義がある。昭和23年創業の「味太助」の初代店主で故・佐野啓四郎氏が開発したメニューに倣っていなくてはならないのだ。そこには戦後まもなくという時代背景が色濃く反映しており、時代が変わった今も、「味太助」ではもちろん、仙台牛たんを名乗る店ならばどこでもそのコンセプトを守っている。東山もそんな専門店のひとつ。牛たん定食の見た目がどの店でもデジャヴのようにそっくりなのも、この定義に則っているからである。

仙台牛タンの生みの親

山形県出身の料理人・佐野氏は二十代の修業時代に、東京で出会ったコックに牛たんのおいしさを説かれ、フレンチのタンシチューを食べてみたところその魅力に憑りつかれた。さっそく自らも牛たんを和食に取り入れるべく試行錯誤を重ね、商品化して専門店「太助(現味太助)」を出したのが昭和23年のこと。これが「仙台牛たん」の発祥であるという。このときに佐野氏が出していた牛たん定食が、現代の仙台牛たんのデフォルトなのである。3枚の炭火焼き牛たんに野菜の浅漬けと南蛮味噌を添えて、麦とろごはん、テールスープと一緒にいただく。戦後間もないころの誕生ゆえ、調理方法が炭火であったこと、そして保存食としての浅漬けも時代背景を映している。白米は贅沢品で、当時は麦ごはんが主流。とろろを添えているのは冷めても食べやすいように、との配慮だ。また、牛たんという食材自体が日本にはあまりなく、佐野氏は1食に供する数を3枚と定めたそう。

人気メニュー「牛たん定食」。基本は元祖・味太助が最初に作った定食と同じ構成。大盛りや少な目というメニュー展開も

また、進駐軍から分けてもらった経緯から、使用食材は外国産のもの、というのが一般的な仙台牛たんの“定義”になっている。そう、とても意外だが、仙台牛たんは国産牛であっては“ならない”のだ。東山でも、牛たんはニュージーランドやポーランド、オランダなどからの輸入肉で、それ以外の牛肉メニューは仙台牛を使用している。

炭火で焼いているところ:焦げないように何度もひっくり返す。真剣なまなざしで焼け具合を見極めている

炭火の上に厚切り牛たんを乗せて何度も裏返し、外側はカリッと香ばしく、中はやわらかジューシーに焼き上げる。噛めばぐっと弾力があり、ピリ辛の南蛮味噌と一緒にほおばると甘味さえ感じる。これが仙台牛たんなのである。さらに、東山には仙台牛たんのほかにも箸でほろほろと崩せるほどに煮込んだ「ゆで牛たん」や鮮度が命なので店舗でしかいただけない「山葵たん」などの人気メニューも。これらをアテにちょっと一杯呑んで、最後に牛たん定食で〆る、なんていう居酒屋的に訪れる人も多く、さまざまなシーンで仙台っ子たちに利用されている。

デパートや催事などでも東山の「牛たん弁当」をいただくことができる。本店で出している定食をアレンジしたもので、本場の味を自宅で楽しむことができる

“日常”を提供する使命

そんなふうに人々の日常に当たりまえに存在する牛たん専門店だが、2011年3月の東日本大震災の際には改めてそれが仙台っ子たちの“ソウルフード”であることを感じさせる出来事があった。

仙台もまた大きな打撃を受け、電気やガスの供給が止まってしまい多くの飲食店が営業できない状況が続いていた。東山もそのひとつ。だが食材がダメになってしまうし、幸いにも仙台牛たんは炭火で焼くと決まっている。つまり調理することができるのだ。この界隈でいち早く営業を再開したのが、東山の本店であった。このとき、本部は「売るか、配るか」で悩んだ末、「売る」ことを選択している。利益を上げることは目的ではない。お客にも従業員にも、一刻も早く“日常”を取り戻してほしかったのだ。軒並みシャッターを下ろす繁華街の一角から漂ってくる炭火焼の匂い。

地下鉄仙台駅から徒歩1分という繁華街の中心に位置する本店。震災後まもなく営業を再開した

ドアを開けると、「いらっしゃいませ」と威勢のいいスタッフの声が飛んでくる。いつもの光景、いつもの味。大災害のあと、不安しかない日々を送っていた人々にとって、いつものようにお店ののれんをくぐり、注文をして料理を食べ、お金を払う。そんな日常的な行動が、どれだけ心を落ち着けてくれたことだろう。予想を上回るほど多くのお客が来店し、感謝の言葉をいただいたという。“被災者”から経済活動を行える普段通りの“自分”に戻る。それが復興への兆しのように感じたのかもしれない。東山の果たした役割は大きい。

「地域の人々に愛され、ありがたいこと」と外販事業部 主任・佐々木昌彦氏

これを機に、東山では全国展開することを決めた。1ヵ所になにかあったときでも変わらずにサービスを提供できるようにするためだ。そこには会社の存続だけではない大きな意味がある。現在は福岡、大阪、広島、名古屋に展開中。仙台の味を広めるにしたがい、牛たんの流通ルートも変わっていきそうである。

企業情報COMPANY

企業名 株式会社ひがしやま
住所 宮城県仙台市青葉区中央2-10-30 仙台明芳ビル6階
TEL 022-712-4129
URL https://www.4129.net/
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