こつこつと愚直に造り続けた塩辛
レジェンドに見初められ、大舞台へ

平塚商店

商品展開は塩辛のみ。近年ではほやの塩辛も加わった。目下ばくらい(ほやとなまこの腸の塩辛)も開発中。商品はお客の声や、自身のひらめきで考える。

創業は昭和30年代。地元のスーパーなどに卸す、極めて小規模な個人商店『平塚商店』があるときを境に全国の百貨店でひっぱりだこに。「誰に見られても恥ずかしくない仕事」で造られた塩辛が、全国の食通を魅了する。

地元に愛される個人商店

住宅街のただなか、ともすればうっかり通り過ぎてしまうほどこぢんまりとした店舗と工場。平塚憲氏がきりもりする塩辛の専門店『平塚商店』は地元に愛されてきた企業だ。先代のころから60数年ずっと、塩竃で塩辛を造り続けてきた。身がしっかりした大きく育った新鮮なイカを仕入れ、わたを抜いて脱水、切って、塩とイカの腑を混ぜて……と、作業の多くは手で行う。「いろいろ機械まかせにできる部分もあるんですけれどもね、ウチはそうしない」。下処理が重要だから、と手間暇かけて造っている。まじめ一徹、愚直なまでの仕事ぶり。昔から変わらないからこそ、地元の人々に愛されてきたのだ。

お客様の期待を励みに

3.11の東日本大震災では、つい200メートルほど先まで海水が迫ってきた。幸い、地震で建物は一部が壊れただけで済み、別の場所からなんとか水を引いてきて断水も乗り越えた。わずか2週間ほどで生産を再開することができたが、この先への不安感に苛まれた。「また地震や津波がきたら? 次はそう簡単に再建できないのではないか――」。そんな折、地元のなじみ客から電話を受けた。「塩辛、買えるかな」。……そうだ。ウチの塩辛は60数年もの間、地元の人々の食卓に並んできたものだ。被災してなかなか業務を再開することができない業者も多い中、人々の生活が少しでも早く日常に戻れるようにしなくては。「またおいしいの造ってよ」の一言に、ずいぶん励まされたという。

立て替えられた店舗と工場。暖簾がなければうっかり通り過ぎてしまいそうなほど、住宅地にとけこんでなじむ小さな店だ。

うまみの強いシンプルな塩辛

『平塚商店』の塩辛の人気は、なんといってもその深い味わいにある。しょっぱくもないし、生臭くもないのだ。その秘密は塩にある。
使っているのは塩竃の藻塩。塩竃沖のきれいな海水をくみ上げ、ホンダワラという海藻と一緒に煮詰めて造る。2トンの海水から20キログラムしかとれないという希少な塩だ。「食べ比べてみると歴然と違いがわかりますよ」と平塚氏が言うように、口に含んでみるとそのまろやかさに驚かされる。このままおつまみになりそうなほど強いうまみがあり、素材の味を引き立てる立役者であることがよくわかるのだ。もちろんごはんと一緒にいただくのもいいが、マイルドな味わいだからこそ、クリームチーズと一緒にあえたり、わさび醤油といただいたり、といったアレンジができるのが特徴的。なるほど、日常的にいただきたくなる逸品である。地元に長く愛されるのもうなずける。

驚くほどマイルドでうまみの強い塩竃の藻塩。このほか、地元を応援すべく、イベント時には仕込みの酒から味噌からすべて塩竈産の「無添加いか塩辛」も造っている。

仕事ぶりを認められて

そうしてこつこつと地元のために塩辛を造り続ける日々だったが、2018年のある日、『みちのく いいもん うまいもん』の催事である人に出会った。「これはうまい!こんなうまい塩辛があったんだ」と驚いた様子で、それで全てが報われたような思いだった。
 というのも、これまでの商談ではバイヤーが価格だけを見て「これじゃ売れない」と試食すらしてもらえないこともあったのだ。『みちのく』では全国で催事を展開している。より多くの人々の目に触れ、試食をしてもらえ、そのうえ「おいしい」と価値を認めてもらえる。今まで機械に頼らず手も抜かず、こつこつと築き上げてきたその努力を認められたような思いがしたのである。だが、コトはそれだけでは済まなかった。“その人”とは、ヒット商品の目利きとして百貨店業界ではレジェンド的存在の超有名バイヤー氏だったのだ。

肉厚で食べでのあるイカも『平塚商店』の塩辛の特徴。「飲める塩辛」がほしいというお客の要望に応えて、いか下足を細かく刻んだ「ぶっかけ塩辛」といった商品も開発した。

胸を張って仕事をする

実際に自ら商品を見に現地まで足を運び、商品価値を見極める。全国津々浦々まで精力的に飛び回ることで知られるバイヤー氏。たまたま『みちのく』で味見をしてもらったことで、『平塚商店』はなかなか出店させてもらえない、敷居の高い物産展にも参加させてもらえるようになったという。「ただ、ただずっと、誰に見せても恥ずかしくない仕事をしてきただけなんです」と平塚氏は謙遜するが、手を抜かず、丁寧に仕事をしてきたからこその味わいなのである。
出店期間中に何度も足を運ぶお客もいるといい、『平塚商店』の塩辛は今や全国にリピーターをもつヒット商品となったのだ。

愚直なまでの仕事ぶりの平塚憲氏。気が付けば全国から所望されるようになっていた。家族で切り盛りする平塚商店の知名度も全国区に。

企業情報COMPANY

企業名 平塚商店
住所 宮城県塩釜市舟入1-3-29
TEL 022-364-6440
URL http://www.ikanoshiokara-honpo.com
商品ページ https://umaimon.smrj.go.jp/product/detail/hM013.html
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