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いわいの里

佐藤氏が代表を務める『「いわいの里」ふるさとづくり研究会』のイチオシ商品は桑の葉茶。「おいしいから自信をもっておすすめできる」逸品だ

岩手は福島に隣接していないから。県境が補償を分ける、その憂き目にあった起業家・佐藤公一氏のとった“戦略”は、ちょっと破天荒。だが、転んでもただでは起きぬその姿勢は、地元と協働して生き抜いていく、その一心に尽きる。

銀行マンから地域の“便利屋さん”へ

2007年に『「いわいの里」ふるさとづくり研究会』を立ち上げた佐藤公一氏は、かつて銀行マンであった過去を持つ。銀行を早期退職したあとは近隣の人々の”便利屋さん“として地域に貢献することにし、近所の人の手伝いをして生計を立てていた。そのうち、養蚕をしていた桑畑のおじいさんが亡くなり、ひとりになってしまったおばあさんから相談を受けた。広い畑を、ひとりでは維持管理ができないという。ご近所でもあるおばあさんを助けたいと、「なじょにかすっぺ(なんとかしよう)」と思い立つ。自身も先祖は養蚕家だったというが、先述の通り銀行勤めのサラリーマンとなったため、家業は継いでいない。ただ養蚕を手伝うのではない、なにかができないものか……。

地元の人々のために奔走する佐藤公一氏。地元を盛り上げるためさまざまな独自戦略を練る。

健康食品に光明を見出す

あるとき、仕事で福島県を訪れると、桑の葉茶というものを見つけた。聞けば、東和町の町おこしの目玉だという。その足ですぐさま東和町へ赴き、桑の葉茶について学び始めた。「お茶」といってもカフェインは含まれておらず、かつ食物繊維も豊富。そのうえ、健康食品として注目されつつある桑の葉茶。「これはいける」と確信した佐藤氏は、有志を募って任意団体を設立。それが「いわいの里」である。
 生産から加工・販売まですべてを担うのではなく、「農商工連携」という方法をとった。「こんな小規模な団体が全部やるなんて無理だもの」と、現実的なのは銀行マンだったころの名残だろうか。まさに大当たりの急成長ビジネスとなったのはさすがである。

桑の葉茶をそのまま粉末にしてあり、鮮やかな緑色がいかにも健康によさそう! クセのない味で飲みやすく、かき混ぜながらいただけば底に残ることもなく飲み干せる

“汚染地”認定で在庫を抱え

とはいえ、「まぁ、あそこで天狗にならなくてよかったんだよ」と、佐藤氏は2011年を振り返る。「原点に立ち返ることができたからね」。
 桑の葉を蒸気で蒸して、乾燥させる、日本茶と同じ手法で作る桑の葉茶。岩手県内で唯一この作業ができる会社を見つけ、県内で製造する。もともと養蚕業を営む人が多い一関市である。材料となる桑の葉には事欠くことはなく、ビジネスは上向きの一路。そんな希望に満ちた日々に起こったのが、東日本大震災だ。
 桑の葉の収穫は8月から10月の3カ月。2011年にはその前年度に収穫した桑の葉から作った800㎏もの在庫を抱えていた。果たして、その年の利益は0円。まったく売ることができなかったという。というのも、農産物の出荷はできなくなり、前年に収穫したものすらまったく売ることができなくなってしまったのであった。

一関には桑園がいくつもある。“便利屋さん”として近所の畑を手伝う佐藤氏の意識は地元との協働。地元を盛り立てていきたい思いでいっぱいだ

自信をもって話せる真実

その年に収穫した桑の葉はすべて廃棄することになったが、自力で立ち直るしかない、と覚悟を決めた。
 まずは800㎏の在庫を売りさばかねばならぬ。全国の物産展にはせ参じ、そこで人々と話をする。「まずは自分が飲んで見せる。私自身がサンプルで、私自身が看板なんです」。信じてもらうために、包み隠さずなんでも伝えた。
 「蓬莱山のよもぎ茶。これね、栄養とかはいいんだけど、私はあまり味が好きじゃないからおすすめしないね」なんて、個人の感想を平気で言う。正直だからこそ信用できる。「そりゃぁお茶を粉末にしたものだもの、完全にお湯に溶けるわけないじゃない」「130グラム2025円って中途半端? だってほれ、大阪万博が2025年にあるからね、応援する意味でつけた値段なのよ」。ぽんぽんと軽快な話しぶりと“裏話”。話しているとついつい引き込まれて笑ってしまう。
 「商品の安全性を信じてもらうなら、まず売り手を信じてもらわなければ」。だからこそ、聞かれたことはなにもかも話すことにしている。「自信をもって売れないものなんてないからできること」と胸を張る。

“地産外商”の考え方

もともとは地域を盛り立てたいと始めた「いわいの里」だが、コンセプトは「地産外商」だ。つまり、地域の産業を地域以外の場所で売りさばき、利益を得るというビジネスである。「こんな小さなエリアでビジネスをしても、高が知れている」。もっと地域を盛り上げるためには、より広く展開する必要があると考えているという。
 桑の実をジャムにしたり、パウダーは麺に練りこんだりと、「いわいの里」の桑の葉はさまざまな素材とのコラボで商品展開も始めている。「良質のものを提供して、お客さんが笑顔になるように。商売=“笑売”の心意気だよね」。元銀行員の才覚と、地域のために働く“便利屋さん”としての地元愛。それらが融合して出来上がる、「いわいの里」の桑の葉茶には、佐藤氏の想いがぎっしりと詰まっている。

栄養価の高い桑の葉。現在の一関市ではセシウムもほとんど観測されず、安全基準を満たしている

企業情報COMPANY

企業名 「いわいの里」ふるさとづくり研究会
住所 岩手県一関市大被東町鳥海宇上野97-3
TEL 090-7329-5725
URL -
商品ページ https://umaimon.smrj.go.jp/product/detail/hI063.html
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