木々の生きた証を伝える、
会津唯一のクラフトアート

木の店ステラ

制作から店の運営までひとりでこなす星 充さん。言葉に飾り気はないが、だからこそ信頼できる熟練の職人だ

消えゆく会津の木材を使いやすく加工し、家庭に届ける『木の店 ステラ』。職人・星 充さんは今日もひとり、粛々と木々を削り続けている。

観光ルート121号

福島県を縦断する国道121号線。米沢から会津若松、日光や益子などの観光地を結ぶその街道は山岳地帯を通ることもあり、豊かな緑が美しい。紅葉狩りや温泉など、さまざまな楽しみがあるこの国道の、ちょうど真ん中あたりの奥会津に位置する『木の店 ステラ』。引き戸を開けて足を踏み入れると、木の香りがすぅっと鼻をくすぐる。奥行のある店内には木、木、木! その多くは地元産。つまり近隣の会津の森を構成するトチやナラ、ブナなどがさまざまに形を変え、実用品や装飾品として“第二の生”を歩み始めている。

『木の店 ステラ』にはさまざまな木製の商品がある。星さんの主な作品は一枚板。DIY用の木材のほか、知人の作品やお土産品なども

消えゆく会津の木材

日本は言わずと知れた森林の国だ。国土面積の実に半分以上が森林に覆われており、林業もさかん。だが、森林や生態系破壊の懸念から、国有林の伐採が禁止されることもある。奥会津の森はまさにそのケースで、約25年前、野生動物保護の目的で保護区に認定されている。伐採は禁止されることになり、奥会津の木材は現存するものがなくなればこの先産出することはない。

ただただ、会津の木々を家庭で長く愛して使ってほしい。そんな願いを込めて、日々もくもくと木を削る

唯一の会津木材工房

「う~ん、会津の木がほかの土地の木とどう違うかなんて、わからないな」。朴訥な口ぶりが魅力の星さんは、『木の店 ステラ』の職人さんだ。言葉は少ないが、嘘がない。「ただ言えるのは、日本の材木は年々減っているってことですかね。この近くにもよそ(他社)の材木置き場があるが、聞いたこともないような名前の外国の木がほとんどですよ」。現在、これほどまでに会津の原木を保有している工房はほかにないという。『木の店 ステラ』に来れば、会津の木々に出合えるのだ。
「ステラ」とはラテン語で「星」の意味。この店は星さんが父とともに盛り立て、受け継いだ家業である。創業は昭和36年。会津の材木だけを取り扱い、加工して販売してきた。星さんが会社員生活に疲れ、この地に戻ってきたのは28歳のとき。木を削り、磨き、形作るその手法は父やほかの職人さんの仕事を見て学んだ。それから30年以上が経ち、すっかり技術を身に着けた星さんは今、ひとりでこの工房を切り盛りする。

40年以上乾燥させた会津の木材から作られる木箸はどれも軽くて使いやすそう。ミズメは硬くて長持ちしそうだし、トチは雪国ならではの木なので、どれにしようか迷う

“顔”の違いが楽しみどころ

ステラの原点であり、現在も最も主力の品はなんといっても一枚板のテーブル。ショップの裏手には「ミュージアム」と称する木材置き場があるが、そこには実にさまざまな加工前の木々が置かれている。中には樹齢数百年はくだらないと思われる巨木を切り出したものも。ひとつひとつ見ていると、木材にも“顔”があるのがわかる。
 「どの木が高級、なんていうのはわからないけれど……“ふう”を見て気に入ったものがいいものじゃないのかね」。星さんの言う「ふう」とは、木目の”顔”のこと。自然のものだから、それぞれ紋様が異なるが、それが好みかどうか、が「いい木材」の決め手になる。
 1枚板は少なくとも10年は自然乾燥させなくては商品にならない。木のコンディションが安定しないからだ。ステラで使用している木材は40年以上乾燥させたものばかりで、強度は抜群。長く使っても反りや割れなどの心配はない。

木材は輪切りではなく、縦にカットされている。「ふう」と呼ばれる紋様は風変りであればあるほど好まれるそう

木々とともに、ずっと

広い工場でひとり、一枚板を削りなめらかにし、注文に応じて足をつけテーブルやいすに加工する。冬場は氷点下になるため、糊が凍ってしまい作業が進まないことも。それでもお客のオーダーに応えようと、星さんはもくもくと作業を続ける。「喜んでいただけるからね、それがうれしくて」とにっこり笑う。
 遠方から再訪してくれる人も多いが、震災後は「会津の木」を買い求める人は激減した。放射能を浴びた木なのではないか。そんな風評から、観光客も含め客足が遠のいてしまったのである。「ここは原発からも100㎞以上離れているし、だいいちウチの木はもう40年、50年も前に切られたものだもの。良い木なのに」。加えて、今年はこのコロナ禍。打撃は大きい。だが、お客がいない間も星さんの手は止まらない。デザインを学ぶプログラムに参加したり、木のおもちゃなどの新商品を試行錯誤しながら作り続けている。「会津の木材はウチにあるもので終わり。ムダにはできない。作り続けなくちゃ」。使命感にも似た気持ちで制作する星さんだが、その表情は穏やか。数十年もともにある木々への愛がこぼれ出ているようだ。星さんがいる限り、この先も会津の工芸品は生み出され、広まっていくのである。

「おもちゃは難しいね、小さいから」と言いながらも、試行錯誤するのはどこか楽しそう。モノづくり自体が好きなのだ

企業情報COMPANY

企業名 北星木材工業有限会社
住所 福島県南会津郡南会津町川島字土橋1205
TEL 0241-62-0128
URL https://www.sutera-w.com
商品ページ https://umaimon.smrj.go.jp/product/detail/hF020.html
特集一覧に戻る