蜂という生き物の存在に感謝と敬意を
奥会津の大自然が凝縮されたはちみつ
松本養蜂総本場

世界に類を見ないほどの植生といわれる只見の山々。その山奥でミツバチたちがつくりだすはちみつは、まさに会津の誇りだ。中でも松本養蜂総本場が食卓に届けるはちみつには安心と安全が詰まっている。
「はちみつの魅力と蜂の力」
「ちょっと疲れてイライラしているときは、菩提樹のはちみつを食べたらもうすっきり、ストレスなんて忘れてよく眠れちゃうんですよ~」と、試食を勧めながら明るくはちみつのよさを教えてくれる松本彩子さん。松本養蜂総本場の五代目・高明さんに嫁して4年、はちみつとともに生活して得た自身の感想や体験談を交えてのトークが魅力だ。蜂へのリスペクトをもち、より自然なままの環境でこだわりをもってミツバチを育てていることを訴えるため、夫妻は西へ東へと直接販売に足を運ぶ日々を送る。

ミツバチのために より自然に近い環境を
そもそも松本養蜂総本場のはちみつは震災の前から「安心・安全」が売りのはちみつだ。はちみつはミツバチの巣箱の行動範囲内にある植物から働きバチが集めた花蜜を巣の中のミツバチが濃縮し、ぐっと糖度を増した完全なる自然食品。しかも、奥会津の大自然の幸をぎゅっと閉じ込めた逸品だ。より会津らしく自然なはちみつを、と考え続けていた矢先、ミツバチは農薬の混じった水を飲むと、飛行距離が短くなったり、衰弱してしまうことがあるという研究結果を耳にする。先代のころから、松本養蜂総本場ではオーガニックと呼べるはちみつづくりに一層力をいれるようになった。
オーガニックの証明というのは非常に難しい。はちみつの場合、ミツバチの行動をコントロールすることができないため、さらに厳しい規定と検査があるのだ。その条件の第一にあるのは、「蜂場(ミツバチが住む巣箱を採蜜や管理のためにまとめて設置する場所)の周囲4㎞以内に消化剤及び禁止農薬の汚染リスクのない地域を選択すること」。松本養蜂総本場のある場所からさらに山奥へ、理想的な蜂場を探して山奥を走り回ったという。

日本で唯一のJONA認証のはちみつ
やっと見つけた蜂場は奥只見にある。人が分け入ることもめったにない、大自然のまっただなか。世界でも類を見ないほど豊かな植生を誇る。会津ならではの安全・安心なはちみつを生産することに成功。かくして2006年、松本養蜂総本場のはちみつは「JONA認定(Japan Organic & Natural Foods Association)」を得た。これは、国産の有機農産物・有機農産物加工食品に対して厳しい検査を通して認証を与えるもので、はちみつとしては日本初にして唯一の認証である。そう、震災の起こるずっと前から、松本養蜂総本場のはちみつは残留農薬などの厳しい検査を受けてきた、安心・安全のはちみつなのだ。

蜂への強いリスペクト
ミツバチのためにそこまで苦労して山奥に蜂場をつくるのはなぜか。松本養蜂総本場 五代目・高明氏は言う。「ミツバチは生まれてから死ぬまで、段階的にそれぞれの役割を果たしながら働き続けて生涯を終える。本当に、働きづめなんです。それを人間がいただいているということ、そして、これはミツバチにかぎりませんが、蜂が媒介して植物の受粉が行われているのだから、地上の生き物すべての命を養っているといっても過言ではない。怖がる人が多いですが、本当は蜂への感謝はもっとあるべきだと思います」。働きバチの生涯は、養蜂家の間では「ミツバチ」にかけて38日といわれる。だからこそ、ミツバチには農薬や汚染のない清らかな環境の中で、少しでも健康に暮らしてほしい。高明氏にとってミツバチがより汚染の少ない場所で活動できるようにすることは、いわば蜂へのリスペクトなのだ。

会津の森をそのまま食卓へ
そうしてミツバチのつくりだしたはちみつは、森そのもの。試食させてもらって食べ比べてみると、蜜源となる植物ごとに味が違うのがよくわかる。松本養蜂総本場のはちみつは実に種類が多く、常時十数種類をそろえている。オーガニック認証のものはそのうち2種類。『栃の花』や『きはだ』など、会津ならではの味だ。
女将の彩子さんは、ちょっと風邪っぽいとか、夜遅い時間なのに小腹が空いてしまったとか、体調や気分にも合わせてシーンごとに食べるはちみつを変えているという。「海外でははちみつは大学などで研究され、薬効が認められています。日本ではそういう調査がされていませんが、確かに効果のあるものなんですよ」と話す。いくつも味見をさせてもらって、「あ、これだ」と思ったはちみつ。それが今、自分の身体や気分が欲しているものなのに違いない。
