何度でも起き上がる白河人の底力
心の支えになるダルマ

ひろじぃ くりすたるあーと工房(有限会社ジェー・コーポレーション)

「ひろじぃ」といっても実はおじいさんではない、「くりすたるあーと」作家・十文字宏之氏。YouTubeでも日々思うことを配信するなど、クリエイターであり、“表現者”でもある。

一度は福島を離れることも考えたが、やはり地元をともに盛り立てたい。伝統とモダンが融合する縁起のいいダルマに込められた、白河人・ひろじぃの不屈の精神にあやかりたい。

現代アートとのコラボだるま

ずらりと並んだだるま、ダルマ、達磨……有限会社ジェー・コーポレーション「ひろじぃ」さんのショップ兼アトリエ『ひろじぃ くりすたるあーと工房』を訪れると、カラフルでつやつやのかわいらしいダルマが出迎えてくれる。じっくり見てみると、それぞれ表情が違う。それもそのはず、どのダルマも、職人によってひとつひとつ手描きで顔や柄が描かれているのだ。でもこのダルマたち、なんだかみんなかわいらしい。
「ひろじぃ」さんこと十文字宏之氏は「くりすたるあーと」の作家。「くりすたるあーと」とは京友禅の技法を用いて絵付けをおこない、特殊な樹脂を何層も重ねて仕上げる、京友禅作家の林裕峰氏が開発した現代アートだ。これを白河だるまに施したのが、『つや福だるま』。十文字氏のオリジナルだ。

伝統工芸品の白河だるまに「くりすたるあーと」を施して、カラフルでかわいらしい『つや福だるま』に。縁起の良さはそのままに、身近に置いておきたくなるかわいらしさが加わった。
地元の神社のある南湖公園は、日本最古の人口湖があることでも知られる。静かな湖面に水鳥がたわむれる気持ちのいい公園で、陸奥国白河藩三代目大名の松平定信公が誰でも気軽に集える場所を、と造らせたのだそう。

白河のだるま

ダルマは、江戸中期に作られた民芸品だ。仏教禅宗の達磨大師がモデルになっており、9年もの間、座禅を組んで修業を行い手足が腐り落ちても修業を続けた姿を起き上がりこぼしに描いたもの。始祖は判然としないが、同じころに全国に広まっている。白河だるまも300年の歴史をもつ、同地の伝統工芸品に数えられる。陸奥国白河藩三代目大名の松平定信公の命により作られたものだ。デザインは当時定信おかかえであった絵師・谷文晁によるもので、眉を鶴、髭を亀、あご髭を松、びん髭を梅にたとえ、顔の下には竹の模様が入っているのが特徴。実にめでたく縁起のよさそうなダルマである。
 ただ、縁起担ぎだけではなく、定信公の治世には天明の大飢饉などが起こっている。倒れても倒れても何度でも必ず起き上がるダルマに、人々はさぞ勇気づけられたことだろう。十文字氏は言う。「白河市民にとってダルマは、今でも特別な存在なんです」。

顔のデザインは白河だるまの伝統をそのままに。老舗製作所「佐川だるま」の職人さんによる手作りのダルマに、「くりすたるあーと」を。ダルマの背にはこれまた縁起のいい桐の絵柄が描きこまれている。

ぎっしり詰まった白河人の想い

そんな伝統工芸品に、最先端技術を用いたモダンアートだなんて、異色の組み合わせのように見えるが、「地元からなにかを発信したい」という想いをもつ十文字氏にとって、白河だるまとのコラボレーションは自然な流れだった。ただ、「くりすたるあーと」は固くて平らなものにしかできない。というのも、樹脂を幾層にもわたってコーティングするため、カーブのあるものに均一に施すのが極めて難しいためだ。それでもダルマに、とがんばったのも、ダルマが白河の人々にとって心の支えであることが大きいのだ。

特に東日本大震災後は、その気持ちはことさらに大きくなっていった。「そんな中から、地域で力を合わせて立ち上がる。ダルマは白河人の意思の表れですよね」。なんとしてでも願いを叶える、という強い思いを込めてひとつひとつ、手作りする『つや福だるま』。触れてみれば、家に連れて帰りたくなることは請け合いだ。

コーティングもさることながら、エアブラシを用いての絵付け自体も、カーブのあるものだとかなりの技術を要する。十文字氏の作品にはボールペンなどの小さなものも多く、驚かされる。

かわいがることで力を発揮

ダルマといえば赤い張り子で作られているものが多いが、『桜咲く つや福だるま』はパステルやレインボーカラー、きらっきらのラメ入りなど、実にカラフル。樹脂コーティングされているため、つるつるの手触りも特徴的だ。「ダルマは神棚の上に乗せたりすることが多いですが、これは玄関先などいつも目に付くところに置いて、毎日触ってかわいがってほしいんです」。願掛けに使われることも多いダルマゆえ、いつも目に入れていると「達成したい自分の願いを常に再確認しつつ、目標に向かっていけるのでは」と十文字氏は話す。
 また、願掛け用に目の入っていないものと、すでに両目が入ったダルマがあるが、後者はだるまにゆかりのある近隣の神社によるご祈祷済みのもの。ダルマには魔除け的な意味もあるので、ご祈祷済みとなるとそのパワーも増すような気がする。タダモノではないだるまなのだ。

妻の律子さんは元女優の経歴をもつ。劇団のなかった白河に自身がプロデューサーを務める劇団をつくり、活動中。夫婦で地元を盛り上げていく。

企業情報COMPANY

企業名 ひろじぃ くりすたるあーと工房(有限会社ジェー・コーポレーション)
住所 福島県白河市新白河1丁目118番地
TEL 0248-27-1314
URL https://hirojii.jp
商品ページ https://umaimon.smrj.go.jp/product/detail/68.html
特集一覧に戻る