「みんな大変だもの」
All Bandaiでやっていく

磐梯酒造

お客様ひとりひとりの1杯のために造ることをモットーにする磐梯酒造。130年の歴史を誇る

福島県会津にある磐梯酒造の社訓は「和醸良酒」。多くの酒造にとって大切な言葉だが、五代目の桑原大氏にはとりわけその言葉の意味は深い。130年超の伝統を誇る酒造の存続をかけて。進んでいく道はまさに社訓の示す通りだった。

愛ある酒

「和醸良酒」とは読んで字のごとく「和をもって良い酒を醸す」、つまり「作り手が協力し合って良い酒を造ること」。そのほかに、「良い酒は和を醸す」という意味でもあるそうだ。
 1890年(明治23年)創業の磐梯酒造は、地域に根差し、地域に愛されてきた企業だ。「会津の人は会津の酒しか飲まないんですよ。モンロー主義ってやつですかね(笑)」と冗談めかして桑原氏は言うが、実際のところ磐梯酒造では会津……さらにいえば、磐梯町で獲れた米と磐梯山の地下水を用いて磐梯町出身の杜氏が酒を造っている。ただ、よくよく話を聞いてみると、それは排他的なモンロー主義などではなくて、純粋に郷土愛に基づくものだ。「毎年タンク1本5,000リットル、計15万リットルの酒を造りますが、従業員には“盃1杯を造るつもりで”と話しているんです」という。それは磐梯酒造の酒を満たしたひとりひとりの盃。感謝と思いやりをもって造るのである。

磐梯山と水田。この空気感の中で育った酒も、さぞうまかろうと想像に難くない

赤い日本酒の先駆け

五代目となる桑原氏もまた、杜氏として酒造りに携わるが、跡取りとしての使命は伝統の味を守るだけでなく、「新規商品を開発すること」。日本酒離れも著しい昨今、清酒の良さを知ってもらい、より多くの顧客をつかむためには、なにかフックが必要だ。というわけで開発したのが、『赤い酒 会津桜』。十数年前に町内の古代米(紫黒米)農家から頼まれて造ったのがはじまりである。
 玄米なので硬く、ふかしにくい。工夫が必要なので、福島県ハイテクプラザに持ち込み研究員とともに試行錯誤した。1年をかけてピンク色の美しいにごり酒を完成させたが、セールスポイントである赤い色が沈殿した澱に移ってしまい透明の酒になってしまった。こりゃダメだ、と改良を重ねてできたのが、現在の赤い会津桜である。
 驚くほど赤く澄んだ色は、もちろん天然。黒米由来のポリフェノールやビタミンB1、B2などの栄養素を多く含み、健康的でもある。ワインのようにフルーティーな芳香があるが、口に含んでみるとたしかに日本酒。ほんのりと甘みを感じる軽い口当たりで、少し冷やせば洋食にも和食にも合いそうだ。「こんな日本酒を造ったのは、当時はウチだけ。先駆けだったし、キワモノという目で見られたけれど、多くの支持を得ることができた」。会津を訪れてくれた人々にもお土産として好評となり、定番商品のひとつとなった。

近所の農家から持ち込まれた、磐梯産の古代米。ルビー色のきれいな発色は、原料による自然のもの

会津人のおもいやり

新商品のおかげで順調に業績を伸ばしていたが、10年前、そう、2011年の東日本大震災が起こると、内陸部の会津にも影響が出てきた。地元の人々が「こんなときに酒を飲むなんて」と飲酒を自粛し始めたのだ。それだけではなく、福島産の酒というだけで買い控えをする向きもあっただろう。磐梯酒造の売り上げはこの年を境に激減した。
 「しょうがないよねぇ、みんな大変だったんだもの」。当時を振り返って、桑原氏は言う。自身も、震災で蔵が壊れ、酒がこぼれて大きな被害があったにもかかわらず、物産展などではひたすら明るく振舞った。「お酒は“和む”ためにあるものだから」と、社訓の「和醸良酒」を胸に悲壮感を出さず、お客さんとも和気あいあいと楽しく会話することを心掛けたのだ。かくして、磐梯酒造の酒をリピートしてくれる人が徐々に増え、地元でのイベントにもわざわざ遠方から会いに来てくれる人すらいたという。桑原氏の思いが伝わったのにほかならない。

イベントでの桑原氏。自社の商品だけでなく、磐梯のよさを笑顔で訴える、その人柄が愛されている

オール磐梯でやっていく

同じように、地元ではしばらくの間「みんな大変」な状況であった。そこで桑原氏はまた新たな商品の開発に着手する。今度は、磐梯町産で安全性を保証するGAP認定のリンゴを用いた清酒ベースのカクテル『Bandaisan Apple x Sake(磐梯山 りんご酒)』だ。清酒とリンゴジュースの絶妙な調合割合は、磐梯町在住のバーテンダーで日本バーテンダー協会理事の金田幸治氏に監修してもらった。まさにすべて磐梯町の中だけで出来上がった新商品である。
 よく冷やしてグラスに注いでみると、ふわりとりんごの華やかな香りが漂う。アルコール度数は8%とビールよりも強いが、甘くさわやかなので気軽にくいくい飲めてしまいそう。だが、ゆっくり味わうほどに日本酒のうまみがじわりと感じられ、かつリンゴ酒によくある酸味もなく実にやさしい味わい。デザートワインのような力強さを持ちながら、それでいてあっさりとした、新感覚のカクテルだ。「これ、全部磐梯町のものだけでできているんですよ」と胸を張る。
 やはり消費が落ちているこのコロナ禍、磐梯町を盛り立てるべく「オール磐梯でやっていく」。磐梯酒造の和醸良酒の心意気である。

かわいらしいエチケットゆえ、プレゼントにもよさそう。チーズなどと合わせて食後酒にも。とても甘くて飲みやすい

企業情報COMPANY

企業名 磐梯酒造株式会社
住所 福島県耶麻郡磐梯町大字磐梯字金上壇2568番地
TEL 0242-73-2002
URL https://www.bandaishuzou.com/
商品ページ https://umaimon.smrj.go.jp/product/detail/142.html
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